COLUMN コラム

【自活研・小林理事長の自転車コラムその59】~適正な空気圧の自転車は意外に多かった~

 実用的な空気タイヤは1888年に、英国スコットランドの獣医師ジョセフ・ボイド・ダンロップによって発明されたと言われている、彼のタイヤが車輪付きの乗り物の乗り心地を革命的に改善しなかったら、クルマ社会は到来しなかったし、私たちが自転車を楽しむこともなかったにちがいない。
 
 2013年のエコプロダクツ展の折、空気を入れたことが無い、とか、虫ゴムを知らない、という子どもたちが少なくないことに驚かされた。タイヤの側面に適正な空気圧が、ヘクトパスカルとkgで書いてあることもほとんどが知らない。空気圧すらチェックしないのでは定期的に整備する発想になるわけがない。
 ところが、適正な空気圧の自転車が何割くらいあるかという調査は、どこにも見あたらない。
 
 そこで、駐輪場の自転車のタイヤをつまんでみようと考えた。多分、誰もこんなバカげた調査はやらないので、多分、世界で初めての調査である。
 この際、この研究で博士論文に挑戦してみようか、などと夢見たが世の中はそんなに甘くはない。なんと自治体の許可が下りない。お預かりしている自転車を勝手に触るのは禁止!とのこと。
 いろいろお願いして、ようやく新潟市の駐輪場で、動かさない、傷つけないという当然のことを条件にお許しが出た。
 
 調査と言っても、スケールでタイヤのふくらみを測るわけでもなく、空気圧メーターで1台ずつ計測するわけでもない。ここは貧乏NPOらしく、指先の圧力計が頼りである。一応、自転車歴60年の私がいわゆる「リム打ちパンク」を起こしやすい程度の空気不足を判断する。
 
 この欄の読者にリム打ちの解説は不要だろうが、念のために説明しておこう。「リム打ちパンク」はタイヤが段差に乗り上げたときに、地面と車輪の金属部分にチューブがはさまれて起きる。このパンクで空く穴が蛇に噛まれた傷跡に似ているところから「スネークバイト」とも呼んでいる。
 
 調査する車輪はリム打ちがより起こりやすい後輪だけ。タイヤの側面を強く握ると、タイヤとリムが離れる感じがあれば「不適切」とした。なかには、明らかに捨てるつもりで放置してあるモノがあり、完全にパンクしているので無視。数時間かけて千台以上の自転車のタイヤをつまんで歩き、指先の指紋が消えるのではないかと心配になった。結果、約3割を空気圧不足と判定した。逆に言えば7割はきちんと空気を入れているのである。
 
 わが国の自転車保有台数を約7,000万台としたら、実に2,000万台以上は乗り心地の悪い自転車である可能性がある。
 
 我が研究会メンバーのなかには、愛車の空気を入れるついでに、近くに駐めてある自転車に空気を入れて回るのが何人もいる。
 小さな親切、大きなお世話だが、あれ?自転車が楽しい!と思ってくれることを想像すると、空気入れもそれなりに楽しいらしい。

【月刊サイクルビジネスより改訂して再掲】
 

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