COLUMN コラム

【自活研・小林理事長の自転車コラムその63】~オリンピック・パラリンピックまでにシェアサイクルを~

 2014年4月に日本シェアサイクル協会という社団法人を立ち上げたことは以前に書いた。全国のシェアサイクル事業者がこぞって参加してくれたので、標準化の方向を探る技術委員会を準備している。
 先行する欧米の都市では、市長がリーダーシップを発揮して、全市を覆い尽くすネットワークをどこかの1社に任せている。街の公共交通機関として成立させるには、100万くらいの人口規模の市を一社一方式で統一するしかない。
 ところが東京では区が主体となっているため、たくさんの異なる方式が乱立している。社会実験レベルであれば、試行錯誤は許されるが、2020年の東京五輪に間に合わせようとするなら、そろそろ方向性を決めなければならない。
 たとえば、海外からの観光客が、パリ、ロンドン、ニューヨークなどと同じだろうとシェアサイクルを借り出し、隣の区へ行っていざ返却しようとすると受け付けられないことになる。諸外国の一般的なシステムでは、クレジットカードを登録し、借り出して一定時間を過ぎると課金が始まり、ポートに自転車を返却すると金額が決定する。返却されなければどんどん課金され続ける。したがって、返却したポートが別の事業者、あるいは別のシステムだった場合には、本人は返却したつもりでも、システム上では借り続けていることになり、知らずに帰国して、数ヶ月後に天文学的な請求金額を見て驚くことになる。
 実は、ロンドンに旅した友人が、シェアサイクルを返却するとき、ロックがかかるのを確認しなかったらしく、10万円以上の請求にびっくりして、当時の運営母体であるバークレイズハイヤー事務局に電話し、ほぼ全額を返金させた顛末を聞かせてくれたことがある。よく考えたら国際電話の料金が数万円かかった、メールでやりとりすれば良かったと嘆いていた。
 
 こうしたトラブルが起きやすい方式を放置しておいては「お・も・て・な・し」を標榜する日本の名に恥じる。区域を超えても、事業主体が異なっても借り出し返却ができるよう、標準化を目指さなければならない。それが協会を設立した趣旨なのだが、いまのところ、それぞれが自社のシステムの優位を主張し、てんでばらばらのシェアサイクルを提供して、市場を奪い合っている。だから、街に面倒な自転車など導入すべきでない、と言い出す自治体幹部まで登場し、わが国のガラパゴス化はさらに進みかねない。
 
 システムを統合・共通化しなければ未来は拓けない。説得しようかと思っていたら、中国から新手の黒船ならぬシェアバイクの襲来である。これが利用者にはやたらと便利で、道路や交通管理を担当する側にはとても迷惑ときている。さあて、日本社会は21世紀の元寇にどう立ち向かうのか、試行錯誤はまだまだつづく。
【月刊サイクルビジネスより改訂して再掲】
 

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