COLUMN コラム

【自活研・小林理事長の自転車コラムその49】〜第五代目自転車名人はついに政界から〜

 実はこの原稿は2013年の筆である。2015年には第六代目名人を選ばなければならない。で、五代目までを振り返ってみることにする。
自転車活用推進研究会はほとんどなにも事業らしいこともしないで、ただあちこちに文句を言っている市民団体に過ぎないが、せっかく徒党を組んでいるのだから何か世の中に役立たないまでも、我々の活動を広く喧伝できるようなことをやろう、というので2005年から「自転車名人」を選んでいる。

 巷には業界がその商品をアピールするために、その商品が似合う芸能人や著名人を表彰するPR活動がある。ジーンズが似合うベストジーニスト、眼鏡が似合う日本メガネベストドレッサー賞、ウイスキー大好きというウイスキーラバーズ アワードなんてのが有名だ。
どれもメーカー団体がやっていて、実にわかりやすい。ベストスマイル・オブ・ザ・イヤーは、笑顔のすてきな人を選ぶのだが、笑顔の業界?と一瞬考えた。答えは日本歯科医師会。納得である。

 ベストサイクリストといったタイトルで、自転車メーカーの業界団体が選んいそうだが、不思議なことにそういった動きが見あたらない。
走り方のマナーが悪いとか、放置自転車が迷惑だとか、イメージを気にする芸能人には嫌われていたのか、単にそういうことを思いつく業界人がいなかっただけのことなのかもしれない。
業界が選ぶと受賞者は競輪選手、という風潮も当時は感じられた。

自転車が好きで、自転車を自転車らしく使うお手本みたいな人を選ぼう、と私たちが考えたのは、健康にも環境にもやさしいはずの自転車が、近所にお買い物に行く下駄がわりにしか利用されていなくて、人やモノを運ぶクルマの機能の一部を代替する本来の性能を発揮できていないのはもったいないと思ったからだ。
だから、速く走るとか、たくさん走るとか、自転車をいっぱい持っているとか、という点は評価の対象にならない。なにしろ「名人」である。
偉そうなことを言うようだが、どのようにうまく使っているか、その動機は何か、といった哲学的な考察が必要なのである。

 で、まず選んだのは日本を代表するロックシンガー・忌野清志郎である。
自転車名人の社会的評価は清志郎名人の就任で決定されたと言って過言ではない。
09年に惜しくも亡くなられたが、その功績はいまに至っていささかも翳りを見せない。感謝、感謝である。

 二代目・鶴見辰吾、三代目・勝間和代。
四代目・片山右京とビッグネームが続き、選ぶ側のNPO自転車活用推進研究会理事会としても悩み抜いた末に、
政界きっての自転車マニア、自転車活用推進議員連盟を率い、日本サイクリング協会の会長でもある
谷垣禎一法務大臣(当時、現・自由民主党幹事長)に白羽の矢を立てた。
実は問題はいつも、ここからなのである。
超多忙な方ばかりだから、表彰式にお越しいただけるかどうか。受賞者本人がいない自転車名人就任式など洒落にもならない。こちらは賞金どころか交通費すら出せない貧乏NPOなのである。ひたすらご厚意にすがるのみだ。
そこは、さすがに自転車大好き人間ばかりなので、これまでは快く登場して、受賞を光栄、とまで言ってくださる。感激の至りである。

 自転車政策は国家レベルで取り組むべき段階に来ている。その意味で谷垣名人への期待はものすごく大きい。
ありがたいことに谷垣名人も覚悟を持って就任するとおっしゃっておられた。
未来はきっと明るいにちがいない。

【月刊サイクルビジネスより改訂して再掲】

 

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