COLUMN コラム

【自活研・小林理事長の自転車コラムその43】~寝ては夢起きては現(うつつ)幻の見果てぬ夢のマイバイク~

 自転車好きにはそれぞれ「夢のバイク」がある、らしい。少なくとも私にはある。
 団塊の世代なので、往年のジュニアスポーツ自転車の黄金時代には、さほど興奮しなかった。
既にランドナーの洗礼を受け、自転車さえあれば地の果てまで行けるとわかっていたが、勇気がなかったので日本列島の半分ほどを走ったところで、より安全で楽なクルマに転向してしまった。
旅先で抱きしめるようにして一緒に眠った愛車は、北海道を離れるときにコントラバスか自転車のどちらかしか持って帰れない羽目に陥り、なんということか!自転車を諦めて後輩に譲り渡してしまった。
今にして思えば、あの自転車こそ私の「夢のバイク」だったに違いない。30年以上経ってもう一度自転車に乗り始めたとき、置き去りにしてきた愛車に義理立てして、小径車にしか乗らないことにしたのだが、やはり身体に合った夢のバイクへの思いは断ちがたい。

 フレームはクロームモリブデン鋼で、脚の短い私に合わせて女性向きかと勘違いされるほど小ぶりにしたい。
ホイールは700Cで20mm程度の極細。ドロップハンドルで相当な前傾姿勢を強いることになるだろう。
ただし、ここからがもうすぐ高齢者となる私のわがままで、フロントハブには極小高効率のダイナモを組み込みたい。輪行の際にライトとの接続を外すのが面倒だが、暗くなると自動点灯する便利さは一度経験すると捨てがたい。俺は昼間しか走らん、と重いライトを敬遠する人もいるが、長いトンネルの飛び込んだ時の恐怖は並大抵のものではない。
くだらない見栄で生命を危険にさらすには年齢を重ねすぎた。ついでに後輪のハブに内装式の多段変速機を潜ませたい。ハブの太いシングルスピード、ピストにも見まがうかも知れない。
重量や負荷の点からいえば外装式が良いに決まっているが、停止してからギヤを戻せる便利さを体感すると、どんどん不精になるシニアには内装が一番である。それも8速、贅沢を言えば11速、ギアレシオを幅広く得られる性能が山坂を含めた長距離には必須である。

 これで自重10kgが理想だが、市販部品では組み上げられない部分があり、特注するしかない。
あるメーカーの方に、ジュニアスポーツが一世を風靡したんだから、シニアスポーツを量産したら売れるのでは、と持ちかけてみた。
さすがにプロ。私の、私による、私のためのシニアスポーツ狙いだとすぐに見透かされ「小林さん、シニアはシニアと呼ばれることが大嫌いだと言ってませんでしたか?」と逆襲された。
夢のためにはやはりこつこつと貯金するしかないようだ。

【月刊サイクルビジネスより改訂して再掲】

PAGE TOP